果樹栽培 病害防除の基本

今回は病害防除の基本について語っていくよ!
果樹栽培と病気対策は切っても切り離せないもの!
基礎となる考え方を知っていれば、栽培が変わるはず!
※露地栽培の場合でお話していきます。

小難しい話があるかもしれんが、大事な話やで!
知れば、栽培が変わるはずや!
防除の基本的な考え方
①防除とは
防除とは「予防」+「駆除」
農作物の病害虫を防ぎ、除くこと。
果樹の場合、病気になってしまった部位は元の状態に戻すことはできない。
そのため、果樹の病気は治療よりも予防に重きが置かれる。
(治療剤もあるが、植物内に侵入した病原菌に効果があるという意味で、果実や葉にできてしまった病斑を治すことはできない。)
②病害防除の基本的な考え方
- 基本は予防剤。治療剤は切り札。
- 薬剤耐性菌の存在はおろそかにしがちだが注意しなければならない。薬剤抵抗性菌の出現は栽培難易度を大きく上げるし、周辺ほ場へも影響を及ぼす。
- 薬剤散布にだけ頼らない。耕種的防除を常に意識する。
病気は予防が基本!
①予防剤が基本
殺菌剤は予防剤と治療剤に大別されるが、殺菌剤の大部分は予防剤である。
治療剤は植物内に侵入した病原菌にも効果があるという意味で、果実や葉にできてしまった病斑を治すことはできない。
病気対策の基本は予防剤による予防的防除である。
予防剤は病原菌が作物の細胞内に侵入するのを予防する薬である。
菌そのものを殺すのではなく、病原菌の侵入・感染を防ぐ作用をもつ薬剤がほとんど。作物体内へ浸透する効果はないため、すでに作物の細胞内に侵入した病原菌には効果はない。
繰り返しとなるが、病気対策の基本は予防剤による予防的防除である。
②多くの病気が雨媒伝染病害
多くの病原菌が雨を媒介に感染するため、予防剤の基本は雨前散布であり、
- 様々な病原菌に効果のある汎用性の高い薬剤を選択する
- 病原菌の感染時期に薬効を切らさない
ことが大切である。
予防剤をしっかり活用すれば、治療剤の活用シーンはほとんど無いとも言える。
③一次伝染を抑える
病害対策は一次伝染を抑えることが最重要。
まず感染させないこと。

何事も最初が肝心!
一次伝染を抑えるためには、
- 伝染源となる前年の「発病部位」・「落葉」・「枯れ枝」の除去を徹底すること。(園地から除去した枝葉は園地に残したままではNG。焼却処分Or園地外で穴を掘って埋める)
- 休眠期の薬剤散布で、越冬病原菌の密度を低く抑え、生育初期の感染爆発を防ぐ。
【一次伝染源を除去せず、休眠期の薬剤散布をしていない状態】で、発芽から1回目の予防散布の間に雨が続くようだと、病気が多発・二次伝染を繰り返すため、その後の防除が難しくなる。
発芽前の休眠期から防除は始まっている。
④予防剤のリレー散布
予防剤の基本は「違う系統のリレー散布」である。
病原菌の感染時期に残効の切れ目をつくらないことが重要。
注意点は近接散布(短い期間でのリレー散布)による薬害被害。薬剤によって異なるが、1週間以内の近接散布は薬剤問わず避けた方が無難。
⑤治療剤・特効薬は切り札
治療剤・特効薬は作用機構を絞ることで効果を高めているが、作用機構を絞っているため、薬剤耐性菌の出現リスクが比較的高い。
病気予防の基本は【薬剤耐性のできにくい多作用点の予防剤】リレー散布。
治療剤・特効薬は天候などの都合により、予防剤のタイミングが上手く調整できなかった場合や発病が確認された場合に切り札として使用する。
治療剤・特効薬の散布後は予防剤のリレー散布に再度努め、治療剤・特効薬の連用を避けた方が栽培は安定する。
(治療剤・特効薬の連用により、薬剤耐性菌を出現リスクを上げることは長期的な栽培難易度を上げてしまう)

治療剤・特効薬は切り札!
だけど、病気が蔓延してからじゃなく、発病初期でスパッと切ることが大切!
治療剤・特効薬は発病初期に使う
病気が蔓延した状態となってから使用するのでは遅い。
感染爆発を起こした状態では、どんな薬も望んた効果を発揮することは難しい。
【発生初期に初期増殖を抑え、次の予防剤のリレーを助けるもの】という位置づけで治療剤・特効薬を使う。
治療剤・特効薬は薬剤耐性菌が発生しやすいため、病原菌の密度が高まってからの散布は薬剤耐性菌発生の危険性が高く、おススメしない。

⑥知っていると得する「雨後の予防剤散布」
病原菌の多くは雨媒伝染病害(雨水が作物の細胞内への侵入に必要)であるため、予防剤の散布は雨前に行う必要があるが、雨後散布でも効果がある場合がある。
雨水によって植物に付着した病原菌が、細胞内に侵入するまでの時間は病原菌によっては様々。短時間の大雨後すぐに、予防剤を散布することで感染を防ぐことができる場合がある。
※病原菌ごとの細胞内への侵入にかかる期間を確認することも重要である。
「雨前に予防剤を散布できなかった」場合に、「雨後、すぐに治療剤を散布することで被害を最小限に抑える(感染直後・発病前で食い止める)」といった考え方もできる。
病原菌の発病メカニズムと予防剤・治療剤の性質を知り・薬剤を上手く選択することができれば病気予防は大きく変わる。
⑦散布タイミングの精度を高める
殺菌剤の基本は予防剤とお話した。
予防で大切なのは薬剤の選択ももちろんだが、薬剤散布のタイミングも重要である。
タイミングがずれてしまうと、狙った効果は得られない。
思考停止で防除暦通りに散布をせず、園地の状況や気象条件にあわせてタイミングを考えることが必要。

予防剤のリレー散布は残効の切れ目を作らないことが大切。
ここからは残効の切れ目を作らない薬剤散布の方法について説明してくよ。
予防剤のリレー散布では薬剤散布の間隔をどうするかが重要となる。残効の切れ目を作ってしまうと、防除は上手くいかない。
【前回散布した薬剤の残効が残っているうちに、次の薬剤散布を切れ目なく行う。】これが予防剤のリレー散布の基本。
一度発病した部位は治療できない。そして次の感染源となるリスクもある。
今までの薬剤散布の労力を無駄にしないためにも、薬剤の残効には気を配る必要がある。
薬剤の残効を測る際は散布後の累計降雨量が大きな指標となる。
薬剤の残効は薬剤の耐雨性と累積降雨量、散布後の日数によってある程度計算できる。

つづいて、累計降雨量と残効の関係について
薬剤は雨で流れる。
散布後の雨量が多くなるにつれ、あるいは降雨強度が強くなるにつれて、流される量も多くなり、最後には予防剤として効果を保てなくなる。
散布した薬剤の残効を直接把握することができないが、散布後の累計降雨量から間接的に残効を推察することは可能。
もちろん薬剤の耐雨性や展着剤の種類や有無によって異なるが、一つの基準を持っておくと、リレー散布の安定性を劇的に高めることができる。
累計降雨量の基準は200㎜~250mm(薬剤によって異なるため、あくまでも参考値。)
累計降雨量がこれを超えた場合は散布後日数に関わらず、残効は期待しにくい。
また、薬剤は紫外線による分解や植物の成長に伴い、少しずつ減少していく。散布後全く雨が降らなかった場合も、2週間を基準に残効が切れると考えるとよい。
【まったく雨が降らなかった場合に2週間。雨が降れば残効は減少し、基準量まで雨が降れば、日数に関わらず残効は切れる。】
通常の降雨量も考えると、【10日を基準に予防剤のリレー散布をつなげていく。そこに降雨量による残効減少分を考慮する。】
⑧自作雨量計による残効予測
園地の累計降雨量と基準累計降雨量、予測降雨量(天気予報)を活用すれば、予防剤のリレー散布は大きく変わる。
しかし、気象庁ホームページの降雨量データはそこまで参考にならない。(場所によって雨量は大きく異なるため。)
大切なのは「自分の園地でどれだけの雨量があったのか」を把握すること。園地に自作の雨量計を設置することをおススメする。
自作雨量計の作り方
【準備物】
- ポリタンク(中にたまった水位が透けて見えるもの。形はなんでもよい)
- じょうご(直径20㎝~24㎝)
【作り方】
- じょうごで降雨量50㎜に相当する水をポリタンクへ入れ、50㎜刻みで300㎜までメモリをつける(油性マジック・定規・ビニールテープを活用するとよい)
- ポリタンクの口にじょうごを取り付ける。固定できればなんでも良い(ビニールテープや接着剤などで固定しても良い。)
※じょうごの直径ごとの降雨量50㎜に相当する水の量
- 直径21㎝:1.73L(1,730g)
- 直径22㎝:1.90L(1,900g)
- 直径23㎝:2.08L(2,080g)
- 直径24㎝:2.26L(2,260g)
自作雨量計の使い方
園地の累計降雨量と基準累計降雨量、予測降雨量(天気予報)を活用し、予防剤の残効を切らさないことを目的とする。
- 雨量を測りたい園地へ置く。(強風で倒れないようにブロックなどで押さえること。
- 基準となる累計降雨量になった時点で次の薬剤散布を実施する。
- 自作雨量計にたまった雨水を捨てて空にする。
- 基準となる累計降雨量に近づき次第、都度、薬剤散布を実施する。
※基準となる累計降雨量に達していなくても、散布後一定の期間が経過した場合は、直ちに次の薬剤散布を行う。残効は薬剤によって様々だが、まったく雨が降らなかった場合でも2週間を基準にリレー散布を行う。
※使用する薬剤ごとに期待できる残効期間を確認し、リスト化しておくとさらによい。

⑨差が出る薬剤散布のコツ
散布時刻は早朝散布が基本。
- 早朝は地表面温度が低いため、地面からの上昇気流が少なく、樹体へ散布しやすい。
- 体への負担も少なく、丁寧な散布を心掛けやすい。
夕方散布は薬害が出やすい。
夕方は風が弱まりやすく、気温も涼しくなってくるため、散布自体はしやすい時間帯だが、日が沈み、薬液が乾きにくくなる時間帯のため、薬害が発生しやすい。
(薬液が乾かずに、葉・果実に触れている時間が長くなるほど、薬害は発生しやすい。)
防除カルテ
園地での防除履歴をもとに、防除カルテを作成してみる。
薬剤名・薬剤の作用機構(RACコード)・対象病害と対象病害の感染時期・希釈倍率・収穫前日数・展着剤・残効性・実際の病気被害状況を視覚的に俯瞰する。
現在の防除の良いところ・悪いところを確認できるため、防除の質は格段に上がるはず。
薬剤の効果測定
最初に病気を発見したポイントに日付・病気名などを書いた目印をぶら下げておく。
薬剤を散布した後、目印ポイント付近で発病が拡大しているようであれば、防除が上手くいっていない可能性が高いため、次の薬剤散布を行う。
次の薬剤散布で大切なことは「何故、上手くいっていないか」を考えること。
薬剤の選択ミス?・薬剤耐性菌の出現?・気象条件(散布後も雨が続いた等)?・散布量や散布方法?(薬液量が少なかった・忙しくて散布が雑だった等)などなど。
その際にも防除カルテが役立つ。
病原菌の感染ルートをイメージする
薬剤散布の散布方法で効果を左右するのは、散布量ではなく有効部位に付着した薬剤の量。
雨媒伝染病害の薬剤散布は木に薬剤の傘をかぶせるイメージで。
雨に当たる部分にしっかり薬剤が付着していれば、雨に薬剤が溶け込み、雨が滴り落ちる箇所にも効果を発揮する。
葉裏はほとんど雨に当たらないため、雨媒伝染病害の場合、葉裏への散布はそこまで効果はない。
雨媒伝染病害の散布では「葉表・樹冠の外側(雨が最初にあたる場所)に薬剤をしっかり・多く付着させること」が重要。
展着剤は耐雨性・残効性を高めるパラフィン系展着剤が相性良い。
風媒伝染病害の薬剤散布は樹全体を薬剤で守るイメージで。
風に乗って伝染するということは、樹全体(葉表・葉裏もまんべんなく)に散布ムラを作らないようにしっかり散布する必要がある。
展着剤は濡れ性を高める展着剤が相性良い。
展着剤の使い分け

①軽んずべからず展着剤
展着剤は惰性で加えるものではない。
なんとなく「薬剤散布で加えるもの」・「加えることで薬剤の効きが良くなる」と考え、思考停止で使用する人も多い。
展着剤は使い方によって、毒にも薬にもなる。
②薬害に注意
展着剤の主成分は界面活性剤であり、界面活性剤の濃度が高くなりすぎると、薬害リスクが高くなる。
展着剤を加えることで「薬液の界面活性剤濃度が高くなり、植物のワックス・クチクラ層を溶かすリスクがある。
有機溶媒・界面活性剤が多く含まれる乳剤への展着剤の加用は注意が必要。
もちろん、乳剤同士の混用も禁物である。

③展着剤の性質と使い分け
展着剤と一言で言っても様々な種類がある。
大別すると
- 一般展着剤
- 機能性展着剤
- 固着剤
展着剤は
- 薬液が植物の表面(葉など)に薄く、均一に広がる(濡れる)性質
- 薬液が植物の表面にしっかり付着する性質
- 薬剤の粒子を水の中で均一に分散させる(沈殿も起こりにくくする)性質
を付与するために加える薬剤。
主要成分は界面活性剤であり、界面活性剤の種類によって様々な作用がある。

何が言いたいかというと、
展着剤は【惰性でなんとなく使用するのではなく、目的をもって選び、利用する】ことが大切ということ!
④おススメしたい展着剤の組み合わせ
殺菌剤は予防防除が基本とお話しした。
その点からもおススメしたい展着剤はパラフィン系。
- パラフィン系展着剤は植物に付着した薬剤を固着させ耐雨性・残効性を高める機能があり、雨前の保護殺菌剤と相性が良い。
- パラフィンが被膜層をつくり、雨をはじくことで病害虫の侵入を予防する効果も期待できる。
ただし、薬害のリスクもあるため、希釈濃度は最も薄い濃度で希釈し、しっかり液量を散布することがポイント。
昨今では降雨強度が高く、雨量の多い豪雨が頻発しており、薬剤の流亡を抑えるパラフィン系展着剤の重要性は高まっていると考える。

パラフィン系展着剤はアビオンEがおススメ。
汎用性という面では浸透力を高めるアプローチBIもおススメ。
アプローチBIは薬液の浸透性・浸達性を高める特徴がある。
- 治療剤との相性がよいこと
- 浸透性を高める効果があるため、散布後1~2日以内に雨にあっても、比較的効力が落ちにくいこと
から
- 治療剤への加用
- 予定外の雨が近づいているが、予防散布ができていない場合
などに効果を発揮する。
アプローチBIは薬害が出にくいため、使用しやすいのもポイント。
●殺菌剤の予防散布はパラフィン系。(風媒媒伝染病害の予防散布はアプローチBI)
●治療剤の散布・雨前の緊急散布はアプローチBI
といった風に展着剤を2剤使い分けるだけで、薬剤散布の効果は大きく変わる。
薬剤散布散布以外の対策(耕種的防除)
今まで薬剤散布ついて説明してきたが、それ以外にも病気対策はある。
薬剤散布はあくまでも防除の一手段にすぎない。
薬剤散布以外にも、それぞれ対策を行うことで、病気の発生リスクを抑えることができる。
病気被害の発生要因を取り除く・小さくしてしまえば、被害が発生しても、大きな問題とならない程度まで抑えることができる。
防除は総合力である。
①病原菌を園地に残さない(伝染源を残さない。)
病原菌に感染した部位は翌年の感染源となることが多い。
例を挙げると、ブドウの黒とう病では感染した葉っぱ・枝で病原菌が越冬。翌年の感染源となる。
翌年の感染源となる「発病部位」・「落葉」・「枯れ枝」は園地に残さず、回収・廃棄することが重要である。
- 発病部位は都度、取り除く。
- 落葉や摘果した果実をほったらかしにせず、園地を常に綺麗に保つ。
- 枯れ枝はせん定時にしっかり除去。
春夏秋冬1年を通して、常に意識し、癖付けておくとよい。
発生源を減らす日々の管理は、雨が続いて薬剤散布を思い通りに行えなかった時、効果を実感する。

耕種的防除の効果は普段は感じにくいもの。
非常時に効果を感じるものだから、おろそかにしがちな部分かもしれないね。
でも、本当の意味で病気に強い栽培体系を築くためには、薬剤散布だけに頼らないことがとっても大切!
②病原菌の発生・増殖に好適な環境条件をつくらない。
病原菌が発生・増殖しにくい環境を整える。というのも大切。
多くの病原菌が雨を媒介に感染するため、トンネル・ビニールハウスによる雨よけ栽培ができれば、病気の発生リスクはほぼ0にできる。
しかし、雨よけ栽培は設備投資が必要なため、簡単ではない。
雨よけできなくても、できる対策はある。
日当たり・風通しのよい環境を整えることは病気の発生リスクを下げる効果がある。
日当たり・風通しを良くすることで、枝葉の濡れ時間を短くする(雨後に枝葉が乾きやすくなる)ことができるからだ。
植物表面が雨でぬれ続けていなければ、病原菌は細胞内に進入できない。
日当たり・風通しを良くすることで枝葉の濡れ時間を短くすることは、病気の感染リスクを減らすことにつながる。(雨媒伝染病原菌の胞子は乾燥に弱く、植物に付着した後、侵入する前に乾いてしまうと死んでしまう。)
また、樹体への薬剤散布効率も上がるため、防除効果も高めることができる。
③病気に強い木をつくる。
病気に強い木を育成することも病気対策では大切。
具体的には言えば、
- 病気に強い品種を栽培する。
- 窒素過剰とならない肥料管理
- カルシウム施用&葉面散布
といった方法がある。
病原菌の多くは硬化した枝葉には侵入できない。



果樹栽培 病害防除の基本は以上!
少し長かったと思うけれど、ぜひ栽培に取り入れてみてね!
