果樹栽培 重要薬剤【展着剤】

yakumokaju

今回は薬剤散布で重要な「展着剤」について語っていくよ!

展着剤を理解すれば、果樹栽培の病害虫被害は大きく変わるはず!

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展着剤とは?

  1. 薬液が植物の表面(葉など)に薄く、均一に広がる(濡れる)性質
  2. 薬液が植物の表面にしっかり付着する性質
  3. 薬剤の粒子を水の中で均一に分散させる(沈殿も起こりにくくする)性質

を付与するために加える薬剤です。

主要成分は界面活性剤であり、界面活性剤の種類によって様々な作用があります。

薬剤散布の際に、【薬剤の効果を高める】&【安定させる】ために使用する薬剤だよ!

近所のおっちゃん
近所のおっちゃん

展着剤無しの薬剤散布では、せっかく農薬を散布しても、

【植物の葉や害虫に散布液が付着せず、多くが流れ落ちてしまう。】

なんてことになりがちや。

葉っぱ表面のワックス層・微細な凹凸が水を弾いてしまうからな。

害虫も水をはじく機構を持っているな。

思っている以上に葉っぱ・害虫は水(薬液)を弾くで。

せっかく薬剤散布をしても、植物や害虫にしっかりかからなければ、薬剤の効果は十分に見込めないよね。

「基本的に薬剤散布では必須のもの」と考えておこう!

展着剤を使用することで、効率的に薬液が植物・害虫にかかるから、薬液量を減らすこともできるよ。

メモ

展着剤は最初に水に溶かしましょう。

③薬剤の粒子を水の中で均一に分散させる(沈殿も起こりにくくする)性質

により、後から加える農薬が分散しやすくなります。

アビオンE、ペタンV、まくぴかなどの展着剤は薬液が泡立ちすぎる傾向があるため、最後に加えます。

メモ

複数種類の薬剤を混用する場合の混ぜる順番

※薬剤は水に溶けやすい順番に加えます。

  1. 展着剤(テ)
  2. 液剤(エ)
  3. 乳剤(ニ)
  4. 水溶剤(ス)
  5. ドライフロアブル(ド)
  6. フロアブル(フ)
  7. 水和剤(ス)

①が最も水に溶けやすく、⑦が最も水に溶けにくい薬剤です。

複数種類の薬剤を混用する場合は①→⑦の順番に混ぜると、均一に分散し、薬液跡が残りくくなったり、効果も上がります。

各薬剤の頭の文字を取って、【テエニスドフス】と覚えよう!

近所のおっちゃん
近所のおっちゃん

ちなみにじゃが・・・

【乳剤には界面活性剤が入ってるから、乳剤散布の場合は展着剤は入れる必要がない。】

なんて言われたりするが、

乳剤に含まれとる界面活性剤は、有効成分を乳剤として水に溶かしこむためのもので、展着剤のような効果はないで。

乳剤の場合も、展着剤は入れような。

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展着剤の種類

①一般展着剤

いわゆる展着剤です。

  1. 薬液が植物の表面(葉など)に薄く、均一に広がる(濡れる)性質
  2. 薬液が植物の表面にしっかり付着する性質
  3. 薬剤の粒子を水の中で均一に分散させる(沈殿も起こりにくくする)性質

を薬液に付与します。

アグラーやダインが有名だね。

一般展着剤は安いから、お手軽だけど、個人的には一般展着剤ではなく、機能性展着剤をおススメするよ。

②機能性展着剤

一般展着剤よりも

  1. 薬液が植物の表面(葉など)に薄く、均一に広がる(濡れる)性質
  2. 薬液が植物の表面にしっかり付着する性質

を強化した展着剤です。

薬液の浸透性・浸達性などを強化し、薬液を植物・害虫体内に入り易くさせる。

といった効果も付与されています。

アプローチBIやスカッシュが有名かな。

アプローチBIは農薬の粒子を細かくし、植物体内へ浸みこみやすくする機能を付与したもの。

スカッシュは濡れ性が高い機能性展着剤で、殺虫剤に使用すると優れた効果を発揮するよ。

近所のおっちゃん
近所のおっちゃん

殺虫剤はスカッシュ

殺虫剤はアプローチBI

みたいに使い分けるのもおススメや!

③機能性展着剤(高価格帯)

ちょっと高いけれど、機能性を向上・更なる機能性を付与させた展着剤だよ。

色々あるけれど、【フーモン】・【まくぴか】が有名かな。

【フーモン】

展着剤に【殺虫・殺菌】の機能が付与された製品。

とくに気門封鎖剤としての役割が秀逸。

都度の薬剤散布にハダニ類対策の効果を付与できる。

【フーモン】は展着剤でもあり、殺虫・殺ダニ剤でもある、ちょっと変わった展着剤だよ。

ハダニ被害を受けやすい、カンキツ・レモン・雨よけブドウ等で特におススメかな。

【まくぴか】

シリコーン系展着剤。

シリコーン成分の働きにより、表面張力を下げる働きが強く、【濡れ性(湿展性)】がとても強いのが特徴。

【少ない液量でもしっかり濡れる・均一に付着させる】ことができるため、薬剤による汚れを軽減することもできる。

まくぴかは薬液が泡立ちすぎる傾向があるため、最後に加えます。

【まくぴか】はすっごい散布しやすいね。

少ない液量でもしっかり濡れる!

おススメ!

④固着剤

パラフィンや樹脂酸エステルにより、植物に付着した薬剤を固着させ耐雨性・残効性を高める機能があります。

一般展着剤や機能性展着剤と異なり、使用できる農薬が限られることも多いです。

また、泡立ちがよいため、最初ではなく、最後に加えます。

濡らす力を高めるではなく、固着力を高める展着剤。

薬液が葉っぱにがっちりくっついて固まる感じ。

カンキツやバラでよく使用されているイメージだね。

【アビオンE】が有名かな。

アビオンEは薬液が泡立ちすぎる傾向があるため、最後に加えます。

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果樹栽培におススメの展着剤は?

独断と偏見によるおススメをピックアップ!

とりあえず、悩んだら【アプローチBI】

とりあえず、悩んだら【アプローチBI】でOKだと思うよ。

しっかり濡れて・広がるし、植物体内への浸透も助けるから、これで十分と言えば十分!

【果実に汚れを出したくない】

【少ない散布量でしっかり濡らしたい】

なら、【まくぴか】

めちゃくちゃ均一に薬剤が付着するし、果実への汚れも出にくい。

濡れやすさで言えば、群を抜いているね。

濡れやすいから、薬液量も少なくて済むよ。

ハダニ被害が気になる・被害を抑えたいなら、

【フーモン】

ちょっと高いけれど、カンキツ・レモン・雨よけブドウで特におススメ!

展着剤+殺虫剤(ハダニ・アブラムシ・コナジラミ)の効果を持った【フーモン】で難防除害虫のハダニ被害を抑えられると思えば、安いもの!

果樹栽培に迷ったらこれ!

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やくも果樹研究所 所長(中の人)
やくも果樹研究所 所長(中の人)
元果樹専門 農業技師
根域制限栽培を中心に研究中。

農業技師時代の専門はカキ・イチジク・ブドウ
好きな果物はキウイ・洋ナシ
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