農薬の系統が分かる【RACコード】

yakumokaju

今回は薬剤散布で重要な「RACコード」について語っていくよ!

ちょっと複雑だけど、知っていると薬剤散布をローテーションを組むときに、視野が広がるはず!

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RACコードとは

農薬を作用機構ごとに分類、記号を振り分けたもの。

殺虫剤にはIRACコード

殺菌剤にはFRACコード

除草剤にはHRACコード

が世界共通で設定されている。

異なるRACコードの薬剤を組み合わせることで、同じ成分の連用を避け、効果的な薬剤散布を行うことができる。

農薬って名前は違うのに、実は同じ有効成分だったりすることがちょこちょこあるよね。

農薬の使用回数は有効成分でカウントするから、使用する有効成分の確認方法は超重要!

近所のおっちゃん
近所のおっちゃん

同じ有効成分の農薬を連続使用していると、その農薬が効きにくくなるリスクもあるからな。

有効成分を確認して、異なる有効成分でローテーションを組むのは大切やで。

実は、農薬のラベルにはRACコードが記載されているよ!

(昔はRACコードが記載されている農薬が少なかったけど、2022年ごろから日本の全メーカーでRACコードが記載されることになったはず。)

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なぜ同じ成分の農薬を連続して使用してはいけないのか

同じ系統・有効成分の農薬を連続して使用すると、抵抗性個体(農薬に耐性を持った個体)の発生リスクが高まります。

同じ系統・有効成分の農薬の連続使用で、抵抗性個体が発生する流れは下記のとおりです。

  1. 病害虫にもそれぞれ個体差(個性)があり、農薬の成分に弱いもの・強いもの、様々な個体が存在します。
  2. ごくまれに農薬を散布しても、生き残ってしまう個体が出現します。(抵抗性個体の出現)
  3. 同じ農薬の連続散布により、抵抗性が強い個体の選抜が進みます。(抵抗性個体の中でも、抵抗性の強い個体ほど、生存率が高いため。)
  4. 生き残った抵抗性個体が増殖していき、そのほ場は抵抗性個体だらけとなってしまう。(その畑では連続散布した有効成分は効かなくなる。)

【②の状態で、とある有効成分への抵抗性個体が出現しても、他の有効成分への抵抗性は獲得していないはずだから、違う系統の薬剤を使用すれば、抵抗性個体をせん滅することができるはず】

という考え方のもと、様々な有効成分でローテーションを組むことが大切!

そういった面からもRACコードは役立つね!

近所のおっちゃん
近所のおっちゃん

抵抗性個体の出現はその畑だけの問題ではないで。

同じ系統・成分の農薬を連続使用することは極力避けるんや。

農薬の開発の歴史は【新しい有効成分の開発と抵抗性個体との戦い】でもあったからな。

参考資料

RACコード(農薬の作用機構分類)については種類が多く、更新されていきます。

RACコード一覧はクロップライフジャパン様がまとめているものが分かりやすいと思います。

クロップライフジャパン様 薬剤抵抗性管理活動 RAC

メモ

RACコードを意識するようになると、【殺虫剤や殺菌剤が効く仕組みと系統の関係】の理解も深まります。

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RACコードの活用例①(殺菌剤を例に)

殺菌剤のRACコード【FRACコード】を活用すれば、殺菌剤による耐性菌発生リスクを減らすこともできるよ。

①【FRACコード:M】の多作用点接触阻害剤は耐性菌の発生が少ないため、連用できるが、古くから使用されている既存剤であることが多く、効果は緩やか。

②新規薬剤は効果が高い反面、耐性菌の発生率が高い。

【FRACコード:M】を発病初期や病気の発生率が低い時期に活用することで、初期発生を抑え、

発病が増加し始めた・病気の発生率が高い時期に、薬効の高い新規薬剤を活用することで、新規薬剤の使用回数を抑えた防除体系を設計することができる。

近所のおっちゃん
近所のおっちゃん

新規薬剤はどうしても作用点がピンポイントになりがちや。

病原菌の特定の生命活動や酵素活性にピンポイントで効果があるように設計することで、特異性・薬効を高めているからな。

つまり、作用点がシンプルかつピンポイントになって薬効が高くなった分、病原菌のわずかな変異が薬剤耐性につながりやすいんや。

その分、よく効くんやけどな。

【FRACコード:M】の接触型と呼ばれる、耐性菌が出にくい従来薬剤と、作用機構がより先鋭化した最新の殺菌剤を組み合わせることが、病気の予防や初期防除に重要ってことだね!

近所のおっちゃん
近所のおっちゃん

【FRACコード:M】の農薬は色々あるが、ボルドー・キノンドー・石灰硫黄合剤・ジマンダイセン・オーソサイド・デラン・ベルクートとかが有名かもな。

メモ

新規薬剤を使用する際は、複合剤を選ぶのもいいかもしれません。

複合剤は複数の有効成分が含まれており、耐性菌発生リスクが少ないとされます。

例)ゲッター水和剤:FRAC10(B2/ジエトフェンカルブ)&FRAC1(B1/チオファネートメチル)

複合剤も連用すれば、耐性菌の発生リスクが高まるため、基本的には1作あたり、同FRACコードが2回以上とならないように、防除体系を組むことが望ましい。

FRACコード:Mの多作用点接触阻害剤は耐性菌の発生リスクが低いため、連用可能です。

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RACコードの活用例②(殺菌剤を例に)

殺菌剤のRACコード【FRACコード】を活用すれば、

【予防剤なのか治療剤なのか】を確認・予測することもできるね。

メモ

殺菌剤には予防剤と治療剤があります。

1)病原菌が植物に侵入するのを防ぐ予防剤。

2)植物内に侵入した病原菌にも効果がある治療剤。

すでに病気が発生している場合、予防剤を散布しても十分な効果は期待できません。

一見すると治療剤の方が良いように思えますが、そう単純なものでもありません。

治療剤は効果のある病原菌が絞られていたり、薬剤耐性菌発生のリスクが高い。といった問題もあります。

近所のおっちゃん
近所のおっちゃん

治療剤はどうしても作用点がピンポイントになりがちや。

病原菌の特定の生命活動や酵素活性にピンポイントで効果があるように設計することで、特異性・薬効を高めているからな。

つまり、作用点がシンプルかつピンポイントになって薬効が高くなった分、効果のある病気の数が絞られていたり、病原菌のわずかな変異が薬剤耐性につながりやすいんや。

治療剤は特定の病気への特効薬のイメージ。

定期的な予防散布にはあまり向かないかな。

薬剤散布の基本は、幅広く効果があり、耐性菌が発生しにくい【予防剤】

予防・発病初期の予防剤!

病気の発生率が高い時期・発病増加時に治療剤!って感じ!

近所のおっちゃん
近所のおっちゃん

治療剤は薬剤耐性菌の発生リスクが高いから、防除の基本は予防剤や。

FRACコードでいうと【M】・【16】・【P】などは予防剤に分類されると思うで!

メモ

浸透性・浸達性:葉っぱの表に散布すると葉っぱの裏側まで薬剤が届く性質。

浸透移行性:葉っぱや根から浸透し、植物全体に成分が移行する性質。

薬剤に浸透移行性という表現が記載されていれば、【治療剤の効果がある。】というイメージでいいでしょう。

こんな感じで防除を考える際に「RACコード」を意識すると、薬剤散布が変わるかも!

情報は都度追記していくから、良ければまた見てみてね。

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やくも果樹研究所 所長(中の人)
やくも果樹研究所 所長(中の人)
元果樹専門 農業技師
根域制限栽培を中心に研究中。

農業技師時代の専門はカキ・イチジク・ブドウ
好きな果物はキウイ・洋ナシ
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