今回は豊洲市場ドットコムが提供している「葡萄の家系図」から「マスカット・ベーリーA」について解説していくよ!!
●「日本ワインぶどうの父」川上善兵衛氏によって交配・育成された品種。
●生食・醸造 兼用品種だが、ワイン用品種としての認知度が大きい。
●日本固有の醸造用品種
黒系品種としては初めての国際ブドウ・ワイン機構の品種登録。
※日本固有の醸造用品種で国際ブドウ・ワイン機構に品種登録されているのは白系品種「甲州」と黒系品種「マスカット・ベーリーA」の2品種のみ。
※2020年10月時点
●生でも美味しいがワイン用が主。
「マスカット・ベーリーA」のワインは果実味が強く、渋みや酸味は弱い。
イチゴのような香り、まろやかな渋みが特徴とされる。
※イチゴなどに含まれるフラネオールが豊富に含まれていることもあり、「マスカット・ベーリーA」ワインはイチゴに似た香りがする。
●環境適正が広く耐病性もあるため栽培もしやすい。
↓
「マスカット・ベーリーA」:日本産赤ワインの代表品種。
①血縁について
「マスカット・ベーリーA」
「ベーリ」×「マスカット・ハンブルグ」
1940年公表品種(川上善兵衛氏育成品種)
「ベーリー」については情報が少なくて詳しく紹介できませんでした。。。
片親だけ少しご紹介。
「マスカット・ハンブルグ」
「マスカット・オブ・アレキサンドリア」×「ブラック・ハンブルク」
イギリス原産品種。
別名「ブラック・マスカット」と呼ばれる。黒いマスカット。
とても強いマスカット香が特徴の生食・醸造 兼用品種。
「マスカット・ベーリーA」の歴史
●品種育成者「川上善兵衛氏」と「マスカット・ベーリーA」
新潟県高田(現上越市)の大地主の家に生まれる。
川上氏の土地はブドウ園の高台から見下ろすことのできる遥かかなたまで「他人の土地を踏まずに歩いて行けた」と言われるほどであった。
七歳の時に父が他界。
幼くして川上家5代目地主となり、十五の時に上京し慶應義塾に入門。
祖父の代から親交のあった勝海舟家にも出入りする中で殖産興業の思想に強く心を引かれるようになった。
東京都下谷区谷中のブドウ園主であり渡米経験のあった小沢善平氏を訪ねたり、甲州のワイン造りの先駆者である土屋龍憲氏のもとに住み込み修行も行っていたようである。
「西洋技術により日に日に変化していく東京」・「変化が遅く自然環境も厳しい地元の越後」の両方を知ることで、近隣農民の収入確保のため、冬季の仕事確保のためワイン醸造を志す。
多くの試行錯誤を超えワイン生産販売を開始。
販売開始当時、日露戦争戦時中であったこともあり軍の嗜好品としてワインは飛ぶように売れたと言われている。
その盛況ぶりは大正天皇が皇太子の時にブドウ園に視察に来るほどであった。
しかし終戦後、ワイン特需は終了。
当時、国民に広くワイン文化が普及しておらずワインの販売量は急激に減少。
経営状況も急速に悪化していった。
生食用のブドウであれば経営転換もしやすかったと予想されるが、川上善兵衛氏は「それならば、より良いワインを作らねば。その基礎として日本の風土に適した優良品種を育成しなければ。」とより品種育成に精を出すようになった。
しかし、川上善兵衛氏がブドウの品種育成に精を出すのに反比例するように経営状態はますます悪くなっていったようである。
最終的に交配品種は10,000株以上を超え、結実まで確認した株は1,100株に上ると言われている。
そして、選抜された品種の一つがのちに日本産赤ワインの代表品種となる
「マスカット・ベーリーA」
自分の私財を投げ売って近隣農民の生活を思いワイン造りに尽力された川上善兵衛氏。
非常に人望のある方だったと言われているよ。
一番の衝撃だったのは人生をかけて育成した改良品種を乞われるまま各地のブドウ園に提供し、その知識も惜しむことなく提供したこと!!
間違いなく「日本ワインブドウの父」と呼ばれるにふさわしい偉人だよ。
②食味について
食味(生食)
●ワイン用品種でもあるため、糖度は高い(参考糖度20度)
●高い糖度だけでなく、しっかりと酸味もあるため、濃厚という表現が合う食味。
今ではワイン用品種のイメージが強いけれど、生果も普通に美味しい品種!!
食味(ワイン)
●イチゴに似た風味。
※イチゴなどに含まれるフラネオールが豊富に含まれているため。
●渋みは少なめ。穏やかな感じ。
●酸味は少ないけれど、フワッと残る。
正直、ワインはあまり詳しくないんだけど、この記事を書くにあたって、少し勉強しました!!
ざっくり言うと、とにかく「フルーティー!!」って感じ。
「軽やかな口当たりなんだけど、イチゴに似た甘い風味が強く香る」って感じかなぁ。
渋めのワインが苦手な方には向いているかも!
最近では色々な品種をブレンドして厚みのあるタイプのワインも作られているみたいだね。
要チェック!!
③栽培難易度について
「湿潤多雨な日本の気象条件下でも良好に生育できる耐湿性」
「育成された地域が新潟県ということもあり耐寒性も強い」
「ちょっと黒とう病に弱いけれど、耐病性もある」
ということでお家でも栽培しやすい品種だね。
簡単な果樹棚を作ってお庭でブドウカーテンをつくると素敵かも。
④独断と偏見による総評
「マスカット・ベーリーA」という品種が素晴らしいのはもちろんだけど、生みの親である川上善兵衛氏の逸話がとにかく好き。
「メルロー」・「シャルドネ」といった世界的なブドウ品種に負けない品種だと思うので、日本固有の醸造用品種として世界に羽ばたいてほしい!!
いつか世界中の人から「日本のワインは美味しい!!」って思ってもらえるようといいな。