病害虫抵抗性を高める【カルシウムについて】

yakumokaju

今回は「三大要素:窒素(N)・リン酸(P)・カリウム(K)に次ぐ要素、カルシウム(Ca)」について語っていくよ!

ちょっと難しい話が出てくるかもだけど、理屈を知っていると栽培管理が変わるかも!

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カルシウム(Ca)について

カルシウムは肥料の5大要素(N・P・K・Ca・Mg)の1つです。

肥料としては一般に「石灰」と呼ばれます。

カルシウムの主要な働きは下記の2つです。

  1. 細胞膜・細胞壁の構造を安定させる(病害虫抵抗性を高める)
  2. 細胞間の情報伝達

細胞膜・細胞壁の構造を安定させる(病害虫抵抗性を高める)

カルシウム(Ca)は細胞膜の構造安定化を担っているよ。

さらに、ペクチンと呼ばれる多糖類と結びつき、細胞壁をつなぎ合わせる「のり」のような役割も果たすんだ。

ざっくりいうと、

カルシウム(Ca)は細胞膜・細胞壁の強度を高め、病害虫への抵抗性を高めているってこと!

人間にとってカルシウムは骨や歯といった骨格維持の役割を担っているよね。植物にとってもカルシウムはそれと似たような役割をもっているってことだね

近所のおっちゃん
近所のおっちゃん

窒素(N)とカリウム(K)はセットってことやな。

②細胞間の情報伝達

実はカルシウムは細胞間の情報伝達(シグナル伝達)に関わっているんだ。

これは動物も植物も共通!

カルシウム(Ca)は細胞同士の共通言語

ってことだね。

カルシウム(Ca)による情報伝達

細胞質のカルシウムイオン(Ca2+)濃度によって、情報伝達が行われることが分かっています。

植物ホルモンや環境変化、病原菌被害など様々な刺激で細胞質のカルシウムイオン(Ca2+)濃度変化が起こることで、植物は様々な細胞機能の調整を行っていると考えられています。

例えば、

1)害虫による食害を受けた葉では細胞質のカルシウムイオン(Ca2+)濃度の上昇。

2)細胞質のカルシウムイオン(Ca2+)濃度の情報は刺激を受けていない別の葉にも伝搬。食害を受けていない葉に害虫が来ていることを伝えます。

害虫被害の情報をまだ被害が出ていない部位へ伝えることで、植物は害虫被害に備えるための遺伝子発現を高めることができます。

↑はあくまでも一例!

カルシウムは様々な刺激を植物内部に伝え、細胞機能の調整を行う、重要な要素ってこと。

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肥料成分としてのカルシウム(Ca)

カルシウム欠乏・カルシウム過剰による症状

カルシウムは植物体内での移動がほとんどないため、欠乏すると、新しい組織(新芽や新根、果実の成長部位)に症状が現れます。

症状としては、成長部位(新芽・新根・果実)の生育が悪くなります。

カルシウムの過剰施肥による過剰症はほとんどありませんが、カルシウム資材の過剰施肥により、下記障害が発生することがあります。

土壌pHがアルカリ性に傾くことで、微量要素(マンガン、鉄、亜鉛、ホウ素)の欠乏症が発生しやすくなります。

※アルカリ性では微量要素(マンガン、鉄、亜鉛、ホウ素)を植物が吸収しにくくなるためです。

マグネシウムやカリウムの吸収阻害が発生し、マグネシウムやカリウムの欠乏症が発生しやすくなります。

メモ

カルシウム過剰がカリウム・マグネシウムの吸収阻害を引き起こす理由

土壌の粘土・腐食部は電気的にマイナス(-電荷)でカリウムやカルシウム・マグネシウム・ナトリウム・アンモニアなどの陽イオン(+電荷)を吸着する能力があります。

この陽イオン吸着量をCEC(Catiom exchange capacity:陽イオン交換容量)と言います。

CECが高いほど、塩基類の保持能力が高くなります(保肥力が高くなります)。

軽し組むを過剰施肥すると、土壌の陽イオンが吸着できるスペースの多くをカリウムが占拠してしまい、カリウムやマグネシウムといった他の陽イオンが土壌に吸着できるスペースが少なくなります。

結果、植物が吸収できるカリウムやマグネシウムが少なくなり、カリウム・マグネシウムの吸収阻害(カリウム・マグネシウムの欠乏症)が発生します。

肥料管理の難しいところはここだよね。

土壌のCECの空き容量とその空き容量にどの要素をはめ込むか。】

このバランスを見極めるためには、一度土壌分析を依頼してみることをおススメするよ!

一度、土壌の状態をしっかり数値化すれば、【何が足りなくて何が多くなっているのか。これからの肥料管理はどうしたらいいのか。】の方向性が見えてくるからね。

地図があっても現在地が分からなければ、目的地にはつかない!

まずは現在地を確認しよう!って感じだね。

トマト 尻ぐされ

野菜だとカルシウム欠乏は分かりやすく症状として出るよね。

チップバーンとか尻ぐされとか。

果樹の場合は、目に見える症状というよりは病害虫被害が出やすくなったり、成長部位の成長が鈍化したり、といった感じだね。

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土壌改良剤としてのカルシウム(Ca)

カルシウム資材は土壌をアルカリ性に傾ける土壌改良剤でもあるよね。

その理屈についても知っておこう!

カルシウム資材が土壌pHをアルカリ性に傾ける理由

土壌pHとカルシウム資材の関係を理解するためには、pHについて理解する必要があるから、まずはpHについて考えていこう!

pH = ‐log [H+] 

ようは水素イオン濃度のことです。

水素イオン濃度が高くなれば、pH は小さくなり、酸性へ。

水素イオン濃度が低くなれば、pH は大きくなり、アルカリ性へ傾きます。

pH(水素イオン濃度) とpOH(水酸化物イオン濃度)両者を足した値は一定であり、

pH+pOH=14となります。

pH7のときpOHも7となり、酸性でもなく、アルカリ性でもない中間の状態「中性」となります。

H+OH=H2O

水って中性だよね。

水素イオン(H+)と水酸化物イオン(OH)が釣り合っていれば、水になるからpH7=中性。みたいなイメージだよ。

pH1pH7pH14
H+濃度濃い中間薄い
酸性強い中間弱い
アルカリ性弱い中間強い

次はカルシウム資材と土壌pHの関係について!

カルシウム資材のカルシウム成分は下記の2つです。

①消石灰:Ca(OH)₂ 

※Ca2+とOHからできた化合物

②炭酸カルシウム:CaCO₃

※Ca2+とCO32-からできた化合物

上記2つは土壌中で水素イオン(H+)を消費します。

①Ca(OH)₂の場合:Ca(OH)₂+2H+=Ca2+2H2O

②CaCO₃の場合:CaCO₃+2H+=Ca2+H2O+CO2

土壌中の水素イオンを消費するということは、土壌中の水素イオン濃度が低くなる。

つまり、pH は大きくなり、アルカリ性へ傾くってことだね。

メモ

消石灰:Ca(OH)₂

アルカリ分は60%以上。速効性で反応が強く、急激な土壌改良に向いています。

アルカリ分が強いのでアンモニア態窒素肥料との混用はさけ、アンモニア態窒素肥料を施肥する場合、最低でも2週間程度間隔をあけて、アンモニア態窒素肥料を施肥しましょう。

炭酸カルシウム:CaCO₃

アルカリ分は50%以上。炭酸カルシウムは緩効性で反応が緩やかなため、緩やかな土壌改良や作物へのカルシウム供給に適しています。

果樹栽培では基本的に炭酸カルシウムによってカルシウムを補給します。

品目にもよるけれど、果樹栽培(落葉果樹)では一般に

元肥(12月~2月)のときに苦土石灰(苦土炭カル)を施肥することが多いかな。

マグネシウム(Mg)と緩効性の炭酸カルシウム(CaCO₃)がミックスされた土壌改良材だよ。

↓は苦土石灰に腐食酸とようりん、微量要素を配合したハイブリッドタイプ。

花野菜用とあるけれど、果樹栽培にもいいと思うよ。

牡蠣ガラを使用したカキガラ石灰も果樹農家さんには人気があるよ。

特徴は効果が極めて緩やかでミネラル分も補給できること。

減農薬栽培・有機質肥料栽培で差別化している農家さんはよく使っている印象だね。

果樹栽培に迷ったらこれ!

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やくも果樹研究所 所長(中の人)
やくも果樹研究所 所長(中の人)
元果樹専門 農業技師
根域制限栽培を中心に研究中。

農業技師時代の専門はカキ・イチジク・ブドウ
好きな果物はキウイ・洋ナシ
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