病害虫防除【病害虫のライフサイクルから考える】

今回は果樹栽培で重要な「病害虫のライフサイクル」について語っていくよ!
知っていると、果樹栽培の視野が一段高くなるはず!
病原菌・害虫のライフサイクル
病害虫被害の原因である病原菌や害虫は、症状や被害が発生する時期以外にも存在しています。園地やお庭からいなくなったわけではありません。
症状や被害が発生する時期というのは、植物にとって
害虫の食害が発生するタイミングである。
病原菌の活動が活発になるタイミングである。
というだけなのです。
病原菌や害虫は年によって多少の変動はありますが、毎年決まったライフサイクルで活動しています。
病原菌や害虫のライフサイクルが分かるようになると、薬剤散布などの時期を先取りして、発生のピークを叩くことができるようになるため、被害の拡大を防ぎやすくなります。

病害虫被害が甚大になる理由は、「症状・被害が拡大してから、防除を行う」から。
【症状・被害が拡大している=明らかに症状・被害が出ている】
その時点で、病原菌・害虫はかなりの量に増えているから、そこから病原菌・害虫の数を減らすのは、かなり大変!

害虫は発生初期。
病気は症状が出る前の予防。
が対策の基本ってことや!

害虫は【卵の駆除、幼虫の捕殺、発生初期】の薬剤散布。
病原菌は【停滞期→活動期への移行時期】の薬剤散布。
と、数が増える時期を先取りして、発生ピークを抑える(増殖しないようにコントロールする)ことが大切だね。
病害虫が発生しにくい環境を整える。というのも大切です。
風通しが悪く、温度や湿度の高い場所は、病原菌や害虫のすみかになりやすいため、日当たり・風通しのよい環境を整えることも重要です。
(ハダニ類は乾燥した環境を好みますが、多くの害虫は湿度の高い環境を好みます。)

その他にも、
植物自体の抵抗力を高める。という考え方も重要やな。
窒素の与えすぎで軟弱徒長すると、病害虫被害が出やすいな。

日々の観察が被害を抑える
病原菌・害虫のライフサイクルを意識すること。と同じくらい大切なことがあります。
それは、日々の観察です。

病原菌・害虫の発生期を知っているだけでは、まだまだ不十分!
発生しやすい場所・症状(発生サイン)も知ることで、早期発見できるようになるよ。

病原菌・害虫のライフサイクルを意識しながら、日々注意深く、発生サインを探すことが大切ってことやな!
↓は害虫の発生サイン例や。(病気の診断は少し慣れがいるし、そもそも発病させないことが重要やから、今回は省くで。)
害虫の発生サイン例
- カンキツ・レモンの葉っぱ果実が黒く汚れている。→カイガラムシが発生。
- 枝や葉にアリが集まっている。→カイガラムシ類が発生。
- 葉っぱが白くかすれている。→ハダニ・グンバイが発生。(葉っぱの裏に黒いものが点々とついていたら、グンバイ)
- 葉っぱに水膨れのような症状がでたり、葉っぱが縮れたように巻く。→アブラムシ類が発生。
- 若い葉っぱに蛇行した白い線のようなものが現れる。→ハモグリガ(エカキムシ)が発生。
- イチジクの幹・枝から木くず・糞のようなものが出ている。→カミキリムシが発生。
- イチジクの枝の樹皮がかじられている。→カミキリムシが発生。
- 枝に白い綿状のものがついている。→アオバハゴロモの発生。
薬剤散布はタイミング!
病害虫被害を抑えるために必須の薬剤散布。
薬剤散布は散布時期を逃すと、十分な効果が期待できません。
タイミングが重要です。

病気は予防中心!
【病気の感染時期前(防除適期)に予防剤を散布】が基本だね。
発病してしまった場合は、発生初期に発病部位を取り除き、園地外で処分&薬剤散布!

発病し、症状が出てから薬剤散布しても、遅いと考えるんや。
そもそも感染させないことが超重要やで!
薬剤は基本予防剤やから、発病後に散布しても意味ないものも多いしな。
発病後の薬剤散布では治療剤を使用するで。


害虫は発生初期の対応が基本!
【生育数が少ない・幼虫が小さい】時期の発生初期に薬剤散布!

大きく成長した幼虫や成虫は薬剤が効きにくいんや。
成虫まで成長させてしまうと、卵を産まれるリスクが上がるしな。
ハダニやアブラムシなんかは指数関数的に増殖していくから、発生初期の爆発的に増える前に叩くことが重要やな。
増殖速度が上がってくると手が付けられなくなるで!
病原菌のライフサイクルから防除を考える(露地ブドウの場合)

一例として、
病気被害の多い「露地ブドウ栽培」で防除を考えてみよう!

今回は露地ブドウで大きな問題となる2つの病気を例に考えるで。
(他にも病気はあるけど、まずはこの2つを意識するとええで。)
黒とう病のライフサイクルから防除適期を考える
- 黒とう病菌は罹病部位(病気にかかった枝・葉・巻きひげ)の病斑組織中で越冬。
- 4月~5月の降雨で活動を再開。胞子を多数形成し、雨滴を媒介に伝染し始める。
- 感染・発病すると、病斑が発生。
- 病斑上でも胞子を多数形成し、降雨のたびに雨滴を媒介に伝染を繰り返し、拡大する。
- 7月~9月の高温期はあまり被害が拡大せず、活動が停滞する。(黒とう病は暑さに弱く、伝染の好適温度が20~25℃のため。)
- 9月以降気温が落ち着いてくると、再度活動が活発化。秋に副梢が発生している場合は、副梢の先端部(若くやわらかな部位)で再び発病し始める。
- 秋が深まるにつれ、活動が停滞。

①~⑦を毎年繰り返す。
これが黒とう病のライフサイクルだよ。

ちなみに黒とう病菌が若葉や伸長中の柔らかい枝に発病しやすい理由は↓のとおりや。

つまり!
黒とう病の活動が活発化する【4月~梅雨明けごろ】に予防剤を定期散布し、初期感染を抑えることが、黒とう病対策の基本ってこと!

特に休眠期の防除と発芽初期の防除が重要やな。

べと病のライフサイクルから防除適期を考える
- べと病菌は発病した葉っぱで作られた胞子で越冬。(胞子の寿命はとても長く、落葉した葉っぱが腐った後も土壌中で2年間は生存する。)
- 休眠期を経て、5月ごろに活動を再開。胞子は水分を得ることで発芽する。
- 発芽した胞子は雨・風で飛散し、ブドウの葉っぱに付着。気孔から侵入・感染する。
- 感染・発病すると、葉裏に病斑が発生。病斑上の胞子から二次伝染を繰り返す。(べと病菌の胞子は風で飛散し、わずかな雨露でも発芽・感染するため、一度発病すると短期間で被害が甚大となる。)
- べと病菌は適応温度が11度~30℃と広く、5月~10月にかけて、発生を繰り返す。
- 発病した葉っぱで作られた胞子は落葉とともに土壌中で越冬。

①~⑥を毎年繰り返す。
これがべと病のライフサイクルだよ。

べと病菌が植物へ侵入する流れは↓のとおりや。

べと病は一度発生すると、進行を止めるのが極めて難しい!
土壌中の胞子が活動を再開する5月(展葉5枚前後)から予防剤を定期散布し、感染させない。
これが基本だよ!

ライフサイクル⑦べと病菌は適応温度が11度~30℃と広く、5月~10月にかけて発生する。
ということやから、5月~10月まで定期的な薬剤散布が必要やな。

どうだったかな?
少し複雑に感じるかもしれないけれど、病原菌のライフサイクルに意識が向くようになると、薬剤散布のスケジュールや散布方法がかなり変わってくると思うよ!

いかに多くの病気が雨を媒介にしているかもわかってくるはずや。
