果樹栽培 肥料の基礎【窒素(N)について】

今回は「肥料の基礎:窒素(N)」について語っていくよ!
ちょっと難しい話が出てくるかもだけど、理屈を知っていると栽培管理が変わるかも!
窒素(N)について
窒素(N)は植物にとって非常に重要な成分です。
窒素の役割は多くありますが、主要な働きは下記の4つです。
- 植物体に欠かせないタンパク質の構成成分(アミノ酸)として重要な成分
- 生命活動に必要な酵素の構成成分
- 光合成に必要な葉緑素の構成成分
- 枝葉・根の成長をさかんにする
植物の枝葉の成長に大きく関わることから【葉肥(はごえ)】とも言われます。

①植物体に欠かせないタンパク質の構成成分(アミノ酸)として重要な成分
②生命活動に必須の代謝を促進する酵素の構成成分
は同じような内容ではあるね。
窒素はタンパク質(アミノ酸)の構成成分であり、酵素はタンパク質からできている。
窒素が十分になければ、生命活動が滞るってイメージだね。
③光合成に必要な葉緑素の構成成分
は意外と知られていないけれど、葉緑素には窒素が含まれているんだ。
つまり窒素が無ければ、植物は光合成ができないってこと。
窒素をたくさん与えると、葉色が濃くなるのは葉緑素がたくさん作られるようになるからだね。
④枝葉・根の成長をさかんにする
についてはイメージしやすいかも。
窒素を与えると、成長が旺盛になるよね。
色々書いたけれど、窒素(N)は植物にとって最も重要な肥料成分と言っても過言ではないよ!
「肥料が足りない・足りている」といった表現における「肥料」とは窒素(N)のことを意味しているほど!

窒素は果樹栽培において超重要じゃが、大量に与えればいいってもんでもないで!
何事も中庸が大切や。
窒素欠乏・窒素過剰による症状
窒素(N)が欠乏すると、
- 植物全体の葉緑素が少なくなり、葉などの黄化が発生。
- 枝葉の成長鈍化が発生。
窒素(N)が過剰となると、
- 葉色が濃くなり、枝葉の成長が顕著に旺盛となる。
- 枝葉の旺盛な成長により、軟弱化(病害虫に対する抵抗性が減少)
- 開花・結実・果実着色が遅れ、果実品質の低下を招く。

窒素欠乏の症状についてはイメージしやすいかも。
窒素過剰の症状②③については補足説明するね!
肥料成分としての窒素(N)
土壌中の窒素にはいろいろな形があります。
- 植物や動物といった生物由来のアミノ酸やタンパク質といった有機態窒素。
- アンモニア態や硝酸態、亜硝酸態といった無機態窒素。
に分かれます。
植物が吸収・利用しやすいのはアンモニア態窒素や硝酸態窒素といった無機態窒素。
有機態窒素も微生物などにより分解され無機態窒素へ変化することで、植物に吸収されます。
※有機態窒素から無機態窒素への形態変化には様々な微生物が関与している。

有機態窒素も結局は無機態窒素に変化し、植物に吸収されるってことだね。
有機態窒素と無機態窒素
有機態窒素
植物や動物といった生物由来の窒素。
(肥料で言うと油粕や魚粕、鶏糞、たい肥等)
有機態窒素から無機態窒素への形態変化は微生物の分解速度によるため、即効性はなく、分解に応じてゆっくり・長期間肥料効果がある。
そのため、有機態窒素は過剰施肥の心配が少ない。
無機態窒素
アンモニア態や硝酸態といった状態の窒素。
(肥料で言うと硫安・硝安等)
硝酸態窒素は、硝酸イオン(NO3-)の形で存在する窒素。
植物が最も吸収しやすい窒素のため、即効性があるが、土壌に吸着されず流亡しやすいため、肥料効果は短かい。
※土壌はマイナス電荷のため、硝酸イオン(NO3-)は土壌に吸着されない。
アンモニア態窒素は、アンモニウムイオン(NH4+)の形で存在する窒素。
土壌に吸着されやすいため、ほとんど流亡しない。
※土壌はマイナス電荷のため、アンモニウムイオン(NH4+)は土壌に吸着しやすい。
植物はアンモニア態窒素をそのまま吸収することもあるが、ほとんどは土壌細菌によって硝酸態窒素に分解され、吸収される。
アンモニア態窒素から硝酸態窒素への形態変化は土壌細菌の反応速度によるため、硝酸態窒素よりも効果はゆっくり(もちろん有機態窒素よりも早い)&長期間肥料効果がある。

土壌分析を依頼されたことがある方は「EC」見たことあるかもしれません。
ECが高いということは、土壌中の硝酸態窒素(肥料成分)が多いから肥料を控えよう&かん水で肥料成分を流そう。
ECが低すぎるということは土壌中の硝酸態窒素(肥料成分)が少ないから、肥料を与えよう。
みたいな感じで土壌分析の1項目として使用されるね。

肥料成分:窒素(N)の基礎はこんな感じや。
次回はより具体的な窒素肥料の特徴について話していくで。
