【夏果イチジク収量確保のための栽培実証】

研究背景

現在、日本では「蓬莱柿(ほうらいし)」・「桝井ドーフィン」の2品種が市場流通の主要品種です。

イチジクで上記2品種以外を市場で見かけることはほとんどありません。

やくも果樹研究所では新たな品種として夏果イチジク「ザ・キング」・「コナドリア」に着目しています。

一般的なイチジクと異なり収穫時期が夏であるためです。

市場流通品種のほとんどは9月中下旬~10月下旬に収穫される秋果イチジクですが、

「ザ・キング」は6月下旬~7月下旬

「コナドリア」は8月中旬~9月下旬        

に収穫できる夏果品種です。

イチジクの規模拡大の際に必ず問題となるのが、収穫・出荷調整の労働時間の多さです。

通常、イチジクは1人あたりの栽培面積限度が10aとなっています。

これ以上の規模では出荷・調整作業が追い付かなくなってくるためです。

イチジク栽培での規模拡大を行うためには夏果イチジクの複合経営による、出荷時期の分散が重要と考えています。

夏果イチジクは良いことばかりのようですが、生産が拡大しない理由があります

着果習性の違いによる収穫量の少なさ

夏果イチジクと秋果イチジクの栽培の最も大きな違いは着果習性(果実の付き方)です。

秋果イチジクはその年に伸びた新梢(春先から伸びた緑色の枝)が結果枝(果実が付く枝)となりますが、夏果イチジクは去年伸びた枝(去年の春先から伸びた茶色い枝)が結果枝となります。

そのため、夏果イチジクは秋果イチジクよりも枝の管理が複雑になり、収穫量が少なくなる傾向にあります。

夏果イチジクの収穫量確保技術については兵庫中央農技センターが開発していますが、実証の詳しい資料を手に入れることが難しい状況だったため、実際に試験を行いデータをまとめることとしました。

試験方法【夏果イチジク 一文字整枝による結果枝・予備枝の交互配置法の実証】

〇仕立て方:一文字整枝

開心自然形の場合、結果枝(今年果実が付く枝)・予備枝(来年果実が付く枝)を十分に配置した仕立て方を習得するには相当な練度が必要となります。

夏果イチジク「ザ・キング」・「コナドリア」は樹勢が強い品種ではないため、一文字整枝導入可能品種であるため、収穫量確保・作業性の観点から一文字整枝とします。

〇枝配置方法

通常の一文字整枝の枝配置よりも密に枝を配置。

交互に結果枝(今年果実が付く枝)・予備枝(来年果実が付く枝)を配置する。